楽譜は、音楽を記録し、伝達するための重要なツールとして古くから使われてきました。最も古い楽譜の記録は、紀元前2000年頃のメソポタミアに遡り、音楽が文字として記録された例がありますが、現在のような楽譜の形が発展したのは西洋音楽においてです。
中世ヨーロッパで、教会音楽を正確に伝えるために使われ始めたのが、今の楽譜の基礎です。特に9世紀には、ネウマ譜という記号を用いて音の高さを示す方式が広まりましたが、まだ完全に音の長さやリズムを示すものではありませんでした。これが、ルネサンス期以降にさらに進化し、五線譜や音符、拍子記号などが整備されて、現代の楽譜に近づいていきました。
楽譜は、作曲家の意図を音楽家に伝えるための「言葉」のような役割を果たしています。楽譜を読むことによって、音楽家は音符に書かれた情報を解釈し、演奏に反映します。この「音の地図」が存在することで、何世紀も前に作られた音楽を、現代でも忠実に再現することができるのです。