酢豚を注文したら、パイナップルが入っていたらどう思いますか?
「はい!」
と答える人もいれば、「入れるな!」と言う人もいるでしょう。
もちろん、これは好みの問題である。
何をもって美味しいとするかは人それぞれだが、味の好みはひとまず置いておいて、この問題を素直に検証してみよう。
大前提として、パイナップルは缶詰ではなく、新鮮なものが良い。
まず注目すべきは、パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素である。
節分用の豚肉は大きな角切りにするので、肉が硬いと食べにくいし、おいしくない。
そこで、パイナップルで豚肉を揉むことで、パイナップルに含まれる酵素が肉のタンパク質を分解し、しっとりとした食感に仕上げることができるのです。
野菜や果物の多くにタンパク質分解酵素が含まれており、すりおろした生姜や玉ねぎを生姜焼きに揉み込むと柔らかくなるのも同じ理由です。
野菜や果物に含まれるタンパク質分解酵素は熱に弱い。パイナップルを最後に加えても肉は柔らかくならないので、加熱前にパイナップルを肉にすり込むことが重要です。
パイナップルのもうひとつの魅力は、そのジューシーさと甘酸っぱさだ。普通なら、甘酸っぱいのだから、酢豚に合わないわけがない、と思うだろう。
しかし、パイナップルを「ご飯のおかず」と考える脳にとっては、噛んだときに出てくる甘酸っぱい汁に違和感があるのではないだろうか。
もし、パイナップルをピューレ状にして、甘酢あんの中に隠したらどうだろう。
不快に思うどころか、おいしいと感じるかもしれない。
お母さんに味覚があるように、人にも味覚があるのです。
家庭で料理をしない、あるいはできない親が増え、外食やケータリングに頼ることが多くなると、味覚の均質化が進むかもしれません。
アメリカのようにファーストフードに飼い慣らされ、バラエティに乏しくなれば、ミシュランの星付きレストランなどに頼るようになるかもしれません。
私は、自分が好きなものであれば、それでいいと思っています。
食は文化ではありますが、統一された独裁国家ではありません。
バラエティに富んでいるからこそ、楽しめるのです。
日本料理だって、ラーメン屋だって、それぞれ違う。
パイナップルが入っていても入っていなくても美味しい。
今日は以上です。